エロゲーの企画書とは?
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概要
企画書とは、会社で新作ゲームや新商品を作る時に1番最初に書く書類です。
新規プロジェクトを立ち上げるにあたってどんなテーマ・コンセプトか、どんなメリットがあるのかを簡潔にまとめたものを企画書と言います。
基本的に会社から予算を出して貰うためにプレゼンテーション用に使用します。
そして、エロゲー制作の場合は複数人数で制作する場合、商品完成のイメージを統一する役割も持ってます。
クイリエイティブ系の会社では当たり前のものです。
会社から予算と許可が降りなければ商業で販売するのは厳しいです。
というか無理。
コンシューマ業界ではゲームプランナーが主に企画を考えますが、エロゲ業界では主にシナリオライターが企画書を書きます。
では、シナリオライターはどのような企画書を書いているのでしょうか?
エロゲーの企画書
ネタ探し
どんな企画書もまず“ネタ”が無ければ書けません。そして、企画動機や作品のコンセプトも考える必要があります。
どんな内容で、どういう層を狙っていくのか?など明確なターゲット層を決めることが必要になります。
要は企画書に説得力も持たせる訳ですね。
どういった層に需要があるのかを明確にできないとGOサインは出ません。
新しいアイディア・ギミックを思いついたら直ぐにメモを取る癖をつけましょう。
一度忘れてしまったアイディアを記憶という倉庫から取り出すのは中々難しいものです。
メモに残しておけば別の企画を考える時に使える可能性もあります。
ゲーム概要
ゲーム概要ではタイトル、ジャンル、キャッチコピー、仕様、作品規模、製作費用などを書いていきます。シナリオ量、プレイ時間、攻略キャラ数、エンド数、イベントCG、背景CG、曲数、セリフ音声など全体のボリュームを決めます。
動作環境などもあると、プログラムを組む時にどんなツールを使用するのか?どの程度の期間を開発に充てるのか?といったことも概ね見えてきます。
攻略キャラ数→エンド数→プレイ時間→シナリオ量、という風に順番に考えるのが良いでしょう。
大体100kBのテキストでプレイ時間は一時間と言われています。
担当決め
企画担当、シナリオ担当、製作担当、グラフィック担当、サウンド担当に振り分り、そこでスタッフを振り分けていくみたいです。他にも、予め決めている外注があるならその会社名を記載しておきます。
全体的に長くなり過ぎないようにタイトルと目次を抜いて、全体で3~5ページで作成するのがコツだそうです。
企画書は外注や流通にも見せることを考えて見栄え良くする。
この辺は一般企業などの企画書も同じですね。
設定
ストーリー設定はテーマ、世界観、ストーリーなど、あらすじを簡潔に記載。キャラクター説明は主人公、ヒロイン、他の攻略可能なサブヒロインも書いておきます。
適当に仮称を付けて、どんな性格か、どんな立ち位置かを簡潔に書いておきます。
ストーリーやキャラクターの細かい設定などは※プロットや仕様書で別に提出。
※ストーリー要約、出来事を原因→結果の順序で並べた文章。
プロットはストーリーや場面のイメージに繋がるものなので必要なものです。
ジャンルや作品の方向性は最初定めたとおり進めないと他に影響が大きく出てしまいます。
そして、キャラビジュアルは余程シナリオに影響がない限りは基本、原画師・グラフィッカーに丸投げだそうで。
とはいえ、一応、作品の雰囲気にあったデザインなどの注釈はあった方が良いでしょうね。
素材見積もり
エロゲーにおいて、プレイヤーが最も向き合う時間が多いのが”シナリオ”です。(バトルシステムやカスタマイズがメインの作品もありますが)シナリオのボリュームによって全体のプレイ時間も変わってきます。
例えば30時間のプレイ時間を想定した大作レベルの作品になると必要なテキスト量は2.5M程度は必要になります。
PCでレポートや文章を書いたことのある人なら分かると思いますが、このページのテキスト量で5KB程度なので、相当な量であることが分かるでしょう。
1日10KB書いたとして、35週間程度。
本職で早い人なら平均で日に20KB程度ですが、それでも18週間とかなりの時間を必要とします。
企画段階で全体のボリュームを考える場合は、作品の根幹となるシナリオ作成ペースも考える必要があります。
さらにCGの枚数も30時間のプレイ時間なら30枚程度だと2時間に1回あるかどうかなので、その倍以上なければ立ち絵だけの時間が多くなり、プレイヤーは退屈に感じて途中でプレイするのをやめてしまう恐れがあります。
また、BGMやSEといったものは誰が制作し、期間はどうするのかも必要になります。
ボイスも必要になるので、収録時間なども必要になりますね。
これらのそれぞれの作業に費やす時間と作業担当者を決めたものが「素材見積もり」になります。
そして、素材見積もりを元に簡易スケジュールを作成することで大体の作業期間を見やすくします。
デバック期間やプレス期間なども組み込みます。
作業できる人数が多ければ一人ひとりの負担を軽減することができます。
しかし、どうしても大まかなものになるので、納期前に修羅場になるのは仕方ないのかもしれません。
企画書は就職に役立つ
エロゲー業界はクリエイティブ系の業界です。なので、どのメーカーもなにかしらの持ち込みを必要とします。
これはコンシューマー業界でも同じです。
例えば、シナリオライターなら今回紹介したような企画書やテキストが必要で、本人の能力を見極めるのに必要になります。
特に企画書は開発環境云々は置いといて良いとして、具体的に完成をイメージする必要があり、本人の資質や思想が顕著に表れます。
同人活動等で製作したノベルゲーも有効です。
1日に何kb書けるなど、それらを基準に判断し、外注や契約社員扱いにするかなどを決めます。
大事なのは本人がどういう考えを持ってその作品を製作したかです。
もちろん才能や技術は必要ですが、将来的にまかせられるかなども見られるので、自分はこういう作品が製作したいという情熱を持って書きましょう。
履歴書に載っていないものが求められる
シナリオライターに求められるのは内容のエロさ・構成力・速筆が主に求められています。どれも履歴書に載せるような内容ではありませんが、1日にどの程度の量のテキストが書けるかは必ず聞かれます。
そもそもシナリオライターになる大半は自分が考えた作品を書きたい・作りたいという人が多い傾向にあります。
自分で考えた作品を作りたい・売り出したいというものがあれば企画書を描くのは必須で、上司やチームメンバーに企画書を魅力的に見せる必要があります。
「確かに、君の言うの通りだ。」と思わせられる説得力や共感性も必要になります。
他人に対して魅力的にプレゼンテーションできるスキルを身につけられれば、シナリオもより魅力的なものが書けるようになるでしょう。
参考にするなら?
企画書というのは基本的には社外秘の書類になるため、サンプルとして公開されていることは少ないです。ボツになった企画を好き好んで公開する人も少ないというのもありますが。
「ここから 遠い どこか」さんの「ゲーム制作関連講座 同人ゲームの作り方」で紹介されいるウォーターフェニックス公式サイトの”「ノベルゲーム」のつくりかた”は、かなり深いところまで解説しているので、シナリオ作りにも役立つでしょう。
ゲーム制作関連講座 同人ゲームの作り方
まとめ
大雑把に書きましたが、企画書の作成方法は会社によって違ってくるみたいですね。昨今のエロゲーはロープライスソフトが人気の傾向にあり、出来は良いのに全体のボリュームが今ひとつな作品はロープライスソフトとしてリリースされることも。
人気が出ればシリーズ化も視野に入れられるので、販売スタイルとしては悪くないでしょう。
1日に書けるテキスト量が不安ならロープライスソフトを狙って企画するのもありです。
驚くことに開発スタッフは“企画書を読まない”人が多く、頭を抱えるシナリオライターは少なくないです。
企画書を読まないということは、その作品の方向性やニーズを理解せずに制作するのでシナリオと噛合わないことがあります。
テキストと声優は下品で良い感じなのに肝心のCGが上品過ぎるといったもの。
陵辱もの抜きゲーなのに、萌え系ですらない美少女マンガ風のイラストだと変ですよね。(好みにもよるのでしょうが)
この場合は原画の方に問題があるのでしょうが、作品に合った原画師を起用しなかったことにも問題を感じます。
企画書というのは全体の指標になるものですから、読んで作品制作への理解が高まれば全体のクオリティアップにも繋がります。
これが売れるエロゲーと売れないエロゲーの差をつける要因のひとつです。
正直、エロゲー業界縮小の原因には開発環境にも問題があるのではないかと感じます。
もちろん、外部的要因もありますが、こういったことの積み重ねが今のエロゲー業界にしたのではないかと思います。
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